飛行の原理





はじめに

 飛行機が飛ぶ原理の説明では長い間、奇妙な理論がまかり通ってきました。
 1つが「空気は翼の前縁で翼の上を通る空気と下を通る空気とに分かれ、分かれた空気は同時に後縁にたどり着き合流する」という「同時到着理論」。
 もう1つが「翼は上側がふくらんでいるから揚力が生じる」という「翼型理論」です。
 前者は実際にためして見ると分かりますが翼の上を流れる空気は下を流れる空気よりもはるかに速く後縁に達します。
 後者の理論では飛行機が背面飛行できる理由が説明できませんし、揚力その物は別にただの板きれであっても(効率はさておき)発生します。
 そして、この後者の理論をまともに受けて作られたのが背面飛行ができない奇妙なフライトモデルを持つ初代エナジー・エアフォースでしょう。
 この2つのおかしな理論は1930年代や40年代の航空教本には一切、登場しません。
 当時の教本は正しくニュートンの理論を解説していたのです。
 1950年代から現代までのいつこれらの奇妙な理論が生まれたのかは定かではありませんがこれから電脳空間において飛行機を飛ばす前に必ずこの2つの理論を忘却しておいてください。
 ついでに「流速が上昇するとそれに伴って減圧する」というベルヌーイの定理も忘れてください。
 これもかえって理解を妨げます。
 翼を理解する上でいちばん簡単なのは「翼とは空気を下に向かって押しつけ、その反動で浮かぶもの」であると理解することです。
 翼の下面を流れる空気は翼に当たることによって下へと押し下げられます。
 同様に翼の上面を流れる空気も翼によって下へと曲げられます。
 物を押すと反作用でこちらも押されるとはニュートンが証明しています。
 これによって飛行機は宙に浮かび続けることができるのです。

飛行機が飛ぶ原理

 まず始めに飛行機が飛ぶ原理というものはいまだに完全には解明されてはいないことを理解しておいてください。
 「翼の上を流れる空気はなぜ下を流れる空気よりもはるかに速く流れるのか?」という研究は「たぶん、こうだからじゃないかな?」と言うレベル以上の解答を見いだせていません。
 しかし、NACA(NASAの前身)などによる長年の研究の結果、「こういう条件設定をするとこういう結果が出る」という法則性はかなりのところまで見いだせています。
 飛行を学ぶ時には「これをこうするとこうなる」と考えましょう。
 「なぜそうなるのか」は考えない方が精神安定のためには良いでしょう。
 大丈夫。
 原理を説明できなくても飛行機は現に世界中の空を飛んでいます。

鍵は「迎え角」

 飛行を理解するに当たってもっとも重要な物がこの「迎え角」です。
 Angle Of Attackの略でAOAとも呼ばれますがこれはようするに「翼が空気にぶつかるときの角度」です。
 飛行機においては常にパイロットから見て真っ正面から風が来るとは限らないのです。
 一般的にはAOAが増大すると発生する揚力も大きくなります。
 スピードが上がると翼にぶつかって向きを変えられる空気の量が多くなるので発生する揚力は大きくなります。
 高度を一定に保ったままで機体を加速したいのならばパイロットは適度に機首下げ入力をしてAOAを下げて揚力を一定に保つように努力しなければならないのです。
 そうでなければ速度が上がるに従って機体は上昇を始めます。
 また、一定の高度を保ったままで速度を落としていきたい時にはパイロットは減速に合わせて機首上げ入力をしてAOAをあげてやればいいのです。
 そうすれば速度が下がっても下がる前と同じだけの揚力を翼は発生し、水平飛行を続けることができます。
 これらの現象は当然のごとくOverGのゲーム中でも再現されています。

失速

 AOAが大きくなればなるほど発生する揚力は大きくなりますがこれにも限界があります。
 ある一定の角度を超えると急激に発生する揚力は小さくなり、同時に抗力が急増します。
 空気の流れに注目するとそれまで翼の上に沿って流れていた空気が途中で翼から剥がれ、乱流となって渦を描き始めています。
 空気の流れが剥がれ落ちることにより揚力の発生メカニズムが崩壊したのです。
 この時のAOAを失速角(Angle Of Stall)と呼びます。
 また、翼の途中から空気の流れが剥がれてしまうことにより、翼の後部に存在する補助翼は効力を失います。
 横転制御が不能になるのはこのためです。
 AOAの過大によって引き起こされる以上、失速は速度が高い時でも起こりえます。
 これを高速失速(High Speed Stall)と呼びます。
 なお、明確な失速を示しにくいデルタ翼が主体となった戦闘機の世界では失速の概念は純粋な航空力学上の定義とは若干、変わっています。
 さらにはF−16やF−22など飛行系統にコンピューターが介入する戦闘機においては機体側が失速に陥る操作を拒否するために失速は起こりにくくなっています。
 実機のF−16やF−22ではひたすら高度を上げるかひたすら速度を下げるかしない限り失速は起こりません。

抗力

 揚力が発生すると引き替えに翼には後ろ向きの力が生じます。
 これを抗力と言います。
 発生する揚力が大きければ大きいほど抗力も大きくなります。
 なので高いAOAで飛行する時には必然と大きなパワーが必要になります。
 その昔、米空軍のファントム2がタンカーから空中給油を受けた際に起こった実話ですが、燃料を受けとって重くなっていく機体を水平飛行させ続けようと、パイロットは増える重量に合わせてスティックを引き、AOAをあげていきました。
 AOAをあげるにしたがって増えた揚力は機体を同じ高度に保ち続けましたが、同時に増えた抗力は機体を減速させようとするので、パイロットは速度を一定に保とうと少しずつエンジンの出力を上げていきます。
 どんどん重くなっていく機体にAOAは増大し続け、やがて大きくなりすぎた抗力で機体はアフターバーナーを点火しなければ速度を維持できないようになってしまいました。
 かくして、燃料を給油されるはなから燃やしてしまう状況に陥ったパイロットはいったん給油をやめ、タンカーに飛行速度のアップを頼んだのでした。
 このようにAOAとそれに伴って発生する揚力と抗力はお互いに関係しあっています。

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